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例によって目が覚めた夜明けの晩

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2008年 04月 29日

ハードコアとは何か?Vol.3

今回も引き続き、84年以降のシーンがいかに下降しているかについて書きたい。この10年程の間にバンド、レコード、ファンジンの数は飛躍的に増加している。だかその質は明らかに低下している。

俺はDIY精神の信奉者だ。パンク・バンドは可能な限り自分達の手で作品を作り上げるべきだと思う。曲作り、録音、プロダクション、パッケージングなどすべてが、そのバンドの創造性とメッセージを反映したものであるべきなのだ。だがDIY=カスというのも、今ではよくあることだ。以前MRR誌上で”DIYはクオリティコントロール・コントロールの死と同義語だ”と評された。Bob Surenはコラムでこう書いた。”デモ・テープの衰退はそのままカスのような7"の大量発生につながった”。つまり、誰もがレコードをリリース出来る様になったのは素晴らしいことだが、問題なのは誰もが実行し始めたことなのだ。録音も悪けりゃジャケもコピーの手抜き7"が、各地のレコード屋のバーゲン・コーナーに大量に放り込まれてる。

DIYムーブメントは大企業による寡占状態を打ち破るための闘争であるべきだと思う。大企業が作ったものより音もパッケージも優れていて、経済的にも審美的にも納得出来るものを作り出すことを、もっと真剣に考えるべきなのだ。手抜きコラージュのジャケットにはもうウンザリだ。歌詞カードはないくせにステッカーとバッヂが付いてるなんて、どっかおかしい。俺はエモ・ファンじゃないが、ハンド・プリントで色違いとか、エモ系バンドはジャケに気を使ってるところは大いに賞賛したい。個人的な意見としては、現在高水準のパッケージでレコードをリリースしているのは、PusheadのFan ClubリリースとSkull Recsだと思う。

フル・アルバムについても言っておきたい。捨て曲ばかりの水増しで、これなら7"で出した方がいいっていうのが多すぎる。量だけあって質が伴わないというヤツだ。コンピレーション・レコードも問題だ。昔はComp.が大きな意味を持っていて、参加バンドにとっては注目を集める大きなチャンスだったから、自分達のベスト・トラックを提供してた。「WELCOME TO 1984」、「P.E.A.C.E」、「FLEX YOUR HEAD」、「LET THEM EAT JELLY BEANS」、「THIS IS BOSTON NOT L.A」、「NY HARDCORE THE WAY IT IS」など、いずれも傑作だと思う。でも今じゃみんな捨て曲をComp.に提供する。全曲カッコいいComp.なんて滅多に見つからない。たった1曲か2曲のためにComp.を買うっていう調子だ。

スプリット7"に対しても複雑な心境だ。バンドのスピリットとメッセージをきちんと表現するには、どうしても中途半端なサイズなのだ。安上がりだし、レコードを出すという目的を果たすことはできるが、単独7"と比較すると圧倒的にインパクトに欠ける。さらにトリビュート・アルバム/カバー・アルバムも勘弁してほしい。確かにエンターテイメント性はあるが、自分のフェイバリット・レコードに何枚のトリビュート・アルバムが入ってる?俺はパスする。あと、CDクソくらえ!レコードで出さないんだったら、出すのやめちまえ。CDがどんなにいいかってことを俺に説明しようと思うな。今後も絶対にCDは聴かないから。ハードコアの基本は7"だ。短くて簡潔で単刀直入。これこそクールってもんだ。

最近俺がウンザリしてるのは”クラスト”っていうレッテルだ。音楽的に俺がクラストだと思うのは、全盛期のDEVIATED INSTINCTとHELLBASTARDだけだ。今ならHIATUSとDOOMってとこか。かつて”クラスト・ミュージック”と呼ばれていたものと、今”クラスティ”・ライフ・スタイルと呼ばれているものの間には、天と地ほどの開きがある。ファスト・ポリティカル・ハードコア・バンドが”クラスト”というレッテルを貼られるのは我慢出来ない。ここ数年俺はクラスティ・ライフ・スタイルとそれを実行する奴らから距離を置いてきた。社会の主流から外れたところで生きて行くのは、自由な精神の持ち主にとっては魅力的だ。個性的で素晴らしい奴もいる。だが同時にそれは典型的アル中ジャンキー・ルーザー共をも魅了するライフ・スタイルだ。じっと座ってだけで、失業保険でドラッグとモルト・リカー買うことしか考えてない。そのくせシーンで建設的ばことをしようとする人間を”キャピタリスト”とか”ファシスト”呼ばわりする奴らは、反逆心なんか持っちゃいない。"コルト45"の12本パック片手に入場料3ドルのショウにやって来て、”金ないんだ”と言うから中に入れてやったら、酔っ払って大暴れ。スキンヘッズより始末が悪い。もつれた長髪、パッチ付けた汚い服、ハード・ドラッグス、社会の落伍者。悪いけどオマエらヒッピーと一緒だぜ。グレートフル・デッドのケツでも追っかけてろ。

クソみたいなロック/ポップ・ミュージックが”パンク”という名で、しかもそれをマーケティングのポイントにして売られている昨今だが、80年代後半にはパンクというだけでなかなかライブをやらせて貰えなかったことを思うと、苦笑いせざるを得ない。今じゃ先週初めてMTVでRANCIDを観たような奴らが、”俺たちもパンクやろうぜ!EpitaphとかFat Wreckみたいなヤツ”などとほざいてる。小僧共には悪いが、最近のEpitaphやFat、LookoutやWarnerのリリースはパンクでもなんでもないぜ。こういうレーベルや、DischordやRevelationなんかが最近リリースしたパンク・バンドと、1984年にリリースされたハードコアのレコードを比べてみればいい。そこには共通点など何もない。こんな魂入ってないクズは断じてパンク・ロックじゃない。パンクをルーツにした最近のポーザー・バンドも頭に来るが、最悪なのはそういうエセ・パンクしか聴かないでスタートしたバンドだ。政治的な姿勢とエナジーが既に失われつつあるのに、このままじゃシーンは体育会系のバカ共が引き起こす暴力沙汰と、大企業の便利な受け皿になっちまう。MTVパンクスがいつの日かパンク本来のアイディアとスタイルに目覚めてくれることを祈るばかりだ。それに何よりも頭にくるのはRANCIDだ。意味のない三流のCLASHのパクリ音楽を大衆に売りつけるために、ハードコア・パンクのスタイル(スパイキー・ヘア、鋲ジャン、モヒカン、コンバット・ブーツ)を使いやがった。本来の自分とは違うものになりたがる奴ら。昔、N.O.T.Aがこう歌った。”Stole from punk what you could use,gonna be a war you're gonna lose”(パンクから使えるものをパクったら、勝ち目のない戦争に突入することになるぜ)。バットをよこせ。俺がブチのめしてやる。

DOLL誌1996年6月号に掲載された「ハードコアとは何か?VOL.3」より転載。(HeartAttaCk' zine #9に掲載されたコラムの和訳。原題はThe End Of Civilization As We Know It.著者はバンドDESTROY!、CODE13、DAMAGE DEPOSITなどでシンガーを勤めたFelix Von Havoc。)


Havoc先生のコラム3回目。今回も敵を作れどんどん作れな調子で歯切れよく進んでいますね。クラスト・バッシングしてますが、アメリカのクラスティーズは本当にボロボロのホームレスみたいな格好で文中にあるようにアルコールやドラッグで堕落した人間が多いとかなんとか聞いたことあります。勤勉な労働者からオシャレな若者まで混じる日本のクラストとは若干事情が違うようです。それにしても最後の「バットをよこせ。俺がブチのめしてやる。」は名パンチライン。

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by yoakenoban_2 | 2008-04-29 17:41 | Havoc


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